* - Story - *




チュンチュンチュン。


陽が昇り、さえずる鳥の声が、
町に朝の音色を届けます。

ミルフェは今日も、
お菓子の下準備に大忙しです。


そして、
太陽の光が窓を通り、
店の中へと差し込みます。


店内に並べられたお菓子の数々。
ビン容器につめられ、アクセントにミントを添えたプリン、
苺の乗せたふんわりとした生クリームのショートケーキ、
ふわふわしてそうなチーズとほんのり甘いアーモンドが生地に練りこまれた
チーズケーキ。

お店の中は、
美味しい匂いに包まれます。


プディは、その一部始終を見守りながら、
大人しく椅子の上に座って、
尻尾を振っています。


ミルフェは、
ドアにかけられた木の板を裏返し、
「open」の文字を外へと向けました。

さあ、今日も『ラ・フィルレ』は
店開きです。


カランカラーン・・・


オープンして間もない時間に、
店のドアの鐘は鳴りました。
お客さんの登場です。

少しずつではあるけれど、
第二のラ・フィルレにも、
常連さんも増えてきました。

ミルフェはいつも、
店内をじっくりと見回すその様子を
ドキドキしながら眺めていました。

そして時に、


「これ美味しかったよ」

「ありがとう」

「また来るね」


そんな声が聞こえる度に、
ミルフェは微笑むのでした。

そんなある日のこと・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ありがとうございましたー!
 ふう。少し疲れちゃったね、プディ」

「わんっ」

「あれ、プリンが無くなってる。
 準備してこないと・・・プディ、ちょっとだけ、店番しててね」

「わわんっ」

「・・・・・、・・・・・・・・」

「・・・くーん」

カランカラーン

「わんっ」

「わあああああ!!!」

「プディ、どうしたの!?」

「くーん」

「い、い、犬っ」

「・・・・・くーん?」

「なんだ、お客さんじゃない。いらっしゃいませ」

「なんなんです、この店は」

「え、何って」

「犬をそんなところに居座らせるなんて、不衛生な!
 外に追い出したらどうですか」

「そ、それはすいません・・・
 でも、プディは大人しくていい子だから
 走り回ったりもしないし、ずっとそこで」

「ふーん。いいこねぇ・・・
 とにかく、ボクは動物が苦手なんで、
 応対によっては取り締まりに告げ口したっていいんですよ。
 なんたってボクはこの町の衛隊隊長の息子なんですから」

「え、そ、そんな」

「まあそんな事しなくても、ボクはアンフェアな事は好きではありませんから。
 この場で勝負といきましょうか」

「勝負?」

「あなたが勝ったら、その犬の事は黙っていてあげましょう。
 ただし、ボクが勝ったら、この店の権利を譲ってもらいます」

「エエエエ、なんでですか!?」

「この土地はボクの両親が買い上げていました。
 ゆくゆくボクの財産になるはずだった、
 それが数ヶ月前に領主が買い上げたというじゃないですか。
 どんな用途に使うのかと思えば、まさか、こんなボクと年の差も無い子供が店主をしてるなんて。
 ボクは許しません」

「で、でもこの場所は・・・」

「これが契約書です。破棄されるまではボクの手に権利がありました、
 二言はありませんね?
 今からシュークリームが50コ売れなかったら、
 この新しい契約書に『シューに捧げる』とサインしてもらいますよ」

「こ、困ったねプディ」

「くううん・・・」

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ミニゲーム

クリア条件:

ミニゲーム終了:

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「ありがとうございましたー!
 ・・・わーい、目標達成!」

「わんっ」

「そ、そんなボクの負けだなんて」

「これでプディも、一緒にいて大丈夫だよね?」

「・・・・そ、それは」

「わんわんっ」

「わああああ、こっちにくるなああああ」

「くーん」

「ゼーハー・・・
 こ、こ、これだから犬は嫌いなんだ!」

「シューくんは、
 この場所で何がしたかったんですか?」

「何って、・・・ふん。あなたにそんなこと言う必要があるんですか?」

「ないですけど、
 わたしにとっては、大事な場所だから、もしかしたら
 シューくんにとっても、大事な場所だったのかも、って思って」

「大事な場所?」

「ずっと前は、ここに両親の店があって、わたしも住んでたから。
 ずっと小さい時で、もうパパもママもいないけれど。
 ここには、いーっぱい、思い出があるから」

「・・・・・」

「わたしは、この場所が凄く大切で。
 小さな店だけど、パパもママもパティシエだったから。
 だから、シューくんにも、何かあるのかなって」

「・・・、ボクは、将来学者か医者になって、
 研究所や病院を建てたいって思ってましたよ。
 この場所がボクの場所になるのか、と思って。
 色んなこと、想像して、よく眺めてた」

「・・・・」

「コホン。まあ、別に、土地の一つや二つ、気になりませんけど。ただ」

「ただ?」

「・・・ボクは、夢に描いてただけだけど、
 あなたにとっては、凄く大切な場所みたいですから。
 引き下がってあげない事もないですよ」

「ほ、ほんとに!?」

「オトコに二言はありませんよ」

「きゃんきゃんっ♪」

「良かったね、プディ」

「わあああ 寄るなあああああ」

「くーん」

「ゼーハー・・・  と、とと、とにかく。その犬はカゴに入れるなり鎖に繋ぐなりしてください、
 じゃなかったらボクみたいな客はきませんよ!!」

「き、気をつけます」

「解ればいいんですよ。
 む・・・もうこんな時間か、早く塾に行かないと・・・それじゃ、
 次くるまでにはその犬なんとかしてくださいよ!!」

カランカラーン

「今の、また来るって意味なのかな?」

「くぅん?」



エピソード「優等生なライバル、シューの目論み」 end




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